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“保険のニーズ(ニード)を探せ”と言っても、探し場所が狭くなって来たかも知れません。昔のようにはデータも入手できず、データが手に入っても、企業経営者の高齢化や家族関係の変容で、ニーズを発見するのは大変です。
ところが、今、保険市場を育て上げるのは“ニーズ”ではなく、ヒトの“ある感覚だ”という考え方が、徐々に大きくなって来ました。ニーズは発見するものではなく、働きかけて“創り出す”ものだと言うわけです。
では、その“感覚”とは、どのようなものなのでしょうか。
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【01】 いわゆる“天涯孤独”な人でさえ… |
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生命保険のニーズ(ニード)を追究するなら、家族がいない孤独者は、当然アプローチ対象から外れます。死亡保険金を残すべき“受取人”が存在しないからです。しかし、その孤独者には、本当に“生命保険のニーズ”はあり得ないのでしょうか。
皆が皆そうだとは申しませんが、孤独な人(たとえば、Aさん)にとって、考えるだけで気が重くなるのは、自分の死の前後かも知れません。元気で暮らしている時なら、一人が快適でも、誰かの助けを必要とする時、一気に事態は暗転するからです。
それでも、死の直前なら、病院であれホスピスであれ、それなりにお金があれば、何とかなりそうです。しかし、もしAさんが“自分が死んだ後”を考えると、どうなってしまうでしょうか。
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【02】 Aさんが死後を考え始めた本当に小さな“きっかけ” |
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『死後の話はどうでもよい』とは言えません。住んでいる家、大事にしていた持ち物、場合によってはペットがいるかも知れません。誰にも見せたくない“秘密”もあるでしょう。自分の“骨”は、どうするのでしょうか。葬式は必要ないと思えても、誰かが死亡届を出してくれるのでしょうか。
しかもAさんには、他人には分からない宝がありました。それは、庭や窓辺に咲く“花の鉢”です。特に、毎年、夏から秋に咲く“月下美人”の鉢は、すでに10個を超えています。この花が、自分の死後、ゴミのように捨てられると考えると、Aさんは急に、耐えがたい思いに襲われるのです。
『たかが花ではないか』と言いたくなりますが、Aさんの思いは、単に“月下美人”にだけ向いているわけではありません。その“耐えがたい思い”は、誰にも構われずに死んで行く“自分自身”に向けられているとも言えるからです。
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【03】 お気に入りのモノに取り囲まれながら“思い出した”こと |
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孤独ではあっても、悠然と過ごした“自分の生き様”自体は、誰にも理解できないかも知れません。しかし、お気に入りのモノたちには、死後も“何かできないか”と考えてしまうのです。それは、既に申し上げた通り、その一つ一つに“自分の人生の足跡”が投影されているからです。それらが朽ち果てるのは、どうしても許しがたい思いになります。それが“自我意識”なのでしょう。
そんな風に考えていると、ふとAさんは、よく遊びに来るBさんを思い出しました。Bさんとは20歳以上、年齢が離れていますが、Aさんが集めた“世界の機関車”模型が好きでたまりません。2人で夜を徹して“遊んだ”こともありました。よく考えると、Aさんは完全に孤独なわけではなかったのです。ただ、家族がいないだけでした。
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【04】 自分が生きた証は決して“小さく”はなかった |
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もちろん、その機関車はAさんの死後、『Bさんにあげる』と約束していましたが、Bさんは『うちは狭いから置けない』と断っていました。
ところが、ふと、ある思いがAさんの脳裏に湧いて来ます。それは“Bさんに家ごとあげればいいじゃないか”という思いです。今や小さな鉄道館でもできそうな数の機関車模型は、今のまま、部屋に残せばよいのです。
そんな風に、ほんの少しだけ“死後”を考えると、今度は『そうか。この機関車やジオラマ(街の模型)を、この家に“展示”して、Bさんに管理してもらうという方法もある』という思いに至ります。ここまで精巧で、世界各地から集まった模型は、なかなか国内では見られません。Aさんが若い頃赴任していたドイツにも、その当時、ここまでのコレクションは見当たりませんでした。
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【05】 晩年に向けて“わくわく”感が増えて行ったAさんのケース |
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Aさんは、だんだん楽しくなって来ました。そして、一人で“自宅博物館化プロジェクト”が始まったのです。博物館化プランの内容は省きますが、その流れから、当然“運営資金”の必要性が生まれます。もちろん、既存の博物館に寄付してもよいのですが、一人で生きて来たAさんには、“ワン・オブ・ゼム(多数の中の一構成員)”のポジションが不快です。
どうしても、独立独歩の博物館にしたかったAさんは、当初はBさんを養子にして相続をすることを考えました。しかし、それでは博物館が長続きするイメージが湧きません。そこで、思い切って法人を設立します。自宅と手持ち資金を“出資”して、株式会社の博物館を生み出したのです。
もちろん、Bさんを取締役に迎えます。
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【06】 自社株相続と養子縁組 |
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もちろん、自宅や資金を“出資”しても、手元に“自社株”が残ります。その自社株の価値は、自宅等の財産評価額とほぼ同額でしょう。そのため、自社株に相続税が掛けられそうなのです。それ以前に、自社株の承継者を決めておかなければ、相続人不在で、財産を国に没収されそうです。 そこで、やはりBさんと養子縁組をすることにし、自社株承継と相続税の納税を託しました。
ここで《生命保険のニーズ》が生まれます。法人契約にせよ、個人契約にせよ、相続税でBさんに迷惑をかけるわけには行かないからです。
考えた末、Aさんは自分を被保険者として、契約者を法人とする生命保険に入りました。受取人は法人です。Bさんも、その方が気が楽だと賛同します。法人が保険料を負担することになりますが、それを“事業収入(入場料や機関車等の貸出収入)”でカバーしようと、2人で“画策”中なのです。
現状では、博物館事業は必ずしもうまく行ってはいませんが、2人とも楽しそうです。しかも、機関車等の貸出しで、その後、多くの人と、貴重な出会いを果たすことになって行きます。
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【07】 晩年の質は“死後”の考え方で決まる |
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人生、とくにその晩年は、過ごし方次第では、“余りもの”のような時間を過ごすことになりがちです。将来がなければ、現在の“味わい”も半減してしまうのです。それが“博物館化”で、死後が“将来”になり、Aさんの“現在”を変えてしまったのです。
もちろん“自分の死後を託す”ことは、託される人には“大きな迷惑”でしょうが、Aさんは、それを“Bさんとの共同事業”という形態と、法人に残す死亡保険金で解消しました。Bさんにもまた、博物館の後継者という“将来”ができたのです。
ただ生計のために、Bさんは自分の仕事も続けましたが、今は『第二の人生が先に決まった』と笑っているそうです。
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【08】 小家族・無家族化の中でもなくならない“思い” |
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これは、まだ特殊な事例に見えるでしょうが、小家族、無家族世帯が増える中、今後は様々に形を変えながら増えて行くはずです。人の《有終の美》を飾りたいという思いは、理屈をはるかに超えたものですので、《有終》を実感すれば、孤独な人でも“他者とのつながり”を意識し始めるでしょう。むしろ、今後は、益々関係が薄くなって行く家族より、近隣の仲間の方が、“死後もつながりたい仲間”になって行くのかも知れません。
そして、その“死後の他者とのつながり”を意識した時、そこには必ず《生命保険のニーズ》が生まれるチャンスがあるはずなのです。待っていても見つからないなら、ニーズは探し出すか、更には創造するしかないのです。
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【09】 保険のニーズは“ストーリー”の中で生まれる! |
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ただ、天涯孤独なAさんに、なぜ生命保険のニーズが生まれたのでしょうか。それは、一口に言うなら、Aさん自身が、月下美人の鉢を起点に、自分の人生の晩年と死後に連続する“自分の物語”を想定したからに他なりません。いきなり保険を検討したのではなく、月下美人を託すところから、機関車の博物館構想を経て、相続後も生きる体制に“思いをはせた”からだと言えるのです。
この“ストーリーを展開するように自分のことを考えてみる”という方法は、自分の人生を様々な形で豊かにしてくれます。イメージできるところから始めて、そのイメージを一つずつ、膨らませながら“形”にして行くと、思いもよらない“創造的な活動”を生み出してくれるということです。
そして、そのストーリーの重要性は“生命保険を提案する”時にも言えることなのです。
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【10】 いきなり保険の話を切り出すのではなく… |
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いきなり保険の話を切り出されても、あるいは保険の有利性を強調されても、保険を検討する気にもなれない人は、少なくありません。しかし、その人の中に、“Aさんの月下美人”のような“共感ポイント”を発見し、それを丁寧に“将来志向”に、ストーリーとしてつなげて行くと、自分の死を超えて“人生”を考える人が出て来ます。
保険営業も、今後は特に、“保険ニーズはない”と考えてしまっている層に、ストーリーを組みながら働きかけて、その流れの中で保険検討に誘う方法が求められるでしょう。数々の困難を乗り越えた保険営業者の皆様は、更なる困難を乗り越えるより、“物語の語り部”として、考えるヒントを提供して行く“人生のサポーター”になって行く方が、ふさわしいのかも知れません。
ただ、そうであっても、そうでなくとも、今や提案では、メリットの提示ではなく、保険検討に至る道筋を顧客に歩ませるための“ストーリー”が不可欠になって来ています。しかも、その“ストーリー”は、一つのシンプルな方法論を身に付ければ、案外簡単に“自作”できるものなのです。
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⇒ 契約クロージングまでの流れ、すなわち《ストーリー》を自作しながら、
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